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DVのない社会求めて加害者更生教育プログラム全国ネットキックオフ集会2019年

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2019年5月11日【くらし】 全国のDV相談件数は年10万件を超え、増え続けています。DV被害をなくすために今、加害者に社会がどう向き合うのか問われています。加害者更生教育に取り組む12都道府県のNPO団体が昨年、全国ネットワーク(山口のり子代表)を設立。このほどキックオフ集会を東京で開きました。(吉岡瑞代)

加害者更生教育プログラムを17年実施・ネットワーク代表 山口のり子さんの講演から

被害者と子の安全を

 まず質問(別項)に自分が該当する項目があるか、考えてみてください。 一つでもあれば当事者になってしまうかもしれませんし、また被害者の話を聞いた時に責めてしまう、加害者の味方をしてしまうかもしれません。ぜひDVを、自分自身の問題として考えていただきたいと思います。 被害者支援として加害者更生教育プログラムを実施する「アウェア」で、2002年から、約800人の男性加害者と面談し、関わってきました。なくすためには加害者がなぜDVをし、どんな共通点があるのかを知ることが必要です。

思い通り「支配」

 DVは「力と支配」です。配偶者や恋人など親密な関係にある相手を自分の思い通りに「支配」することが目的で、手段として「力(暴力)」を使います。暴力には身体的、精神的、性的、経済的など、相手に影響を与えるすべての行為が含まれます。加害者は「支配」を維持するために、さまざまな虐待行為を巧みに繰り返します。 その結果、相手の価値観や判断力、自己決定権、培った人間関係、自尊心、人としての尊厳さえ奪う。相手の人生を搾取する行為なのです。 DVは女性から男性、LGBT(性的少数者)にも起きます。ただ女性被害者が8割を超えて圧倒的に多いのは、女性を見下す女性差別の社会構造があるからです。 加害者には「いつも自分は正しいという思い込み」「特権意識」「自分こそが被害者と考える」「暴力容認の意識がある」「自分がしている虐待を相手のせいにする」など数多くの共通点があります。

児童虐待と関連

 アルコールやストレスは暴力のきっかけであって、原因ではありません。加害者はどこにでもいる普通の人たち。周囲からはいい人だと思われている人が多く、親密な相手だけを虐待します。 「恋人には反論しないこと、服従することを求める」「僕は怒りを表していいけど妻が怒ったりするのは我慢がならない」などの言動には、加害者のゆがんだ考え方が現れています。「被害者にも落ち度があるのでは」という考えはまったく違います。逃げ場のないように、さまざまな暴力を使って支配を完成させていくのです。 DVは、子どもを虐待することとイコールです。子どもの前でDVすることだけが問題なのではなく、DVのある家庭の空気(価値観、立ち居振る舞い)をすべて子どもに吸わせていることが暴力であり、受動虐待です。DVは、子どもの人生をも暗く不健康にしてしまう可能性があるのです。児童虐待とも密接な関係があり、児童虐待防止のためにも加害者対策が不可欠です。

教育と訓練の場

 アウェアの更生教育プログラムは、治療でもカウンセリングでもなく、グループで行う教育と訓練です。時間をかけて変わっていく人は確実にいますが、途中でやめてしまう人も多くいます。 アメリカでは加害者に更生プログラムの参加が義務づけられており、日本は世界水準からみて遅れています。自覚のない加害者のために、適切な更生教育プログラムに向かわせ、続けさせる法律が必要だと思います。 またさまざまな制度や文化、人々の意識などにおいて、性の平等社会に向けた対策も必要です。 DVは社会が生み出している問題です。DV、虐待で殺される被害者を一人も生まないために、加害者更生教育プログラムが全国で実施されるよう力を合わせましょう。

自分が該当する項目は?

□ 加害者は仕事のストレスからDVをしてしまうんだろう

□ ひどい目にあっているのに離れない女性にも問題があるんだろう

□ 息子には強くたくましい男性に、娘は素直で優しい女性になってほしい

□ 弱音をはく男は女々しい

□ 容姿を気にかけない女はかわいげがないと思う

□ 言うことを聞けないなら出ていけ、ご飯抜きだとかいう多少の脅しは教育に必要だ

□ ある日本人男性が家族を連れてアメリカのロサンゼルスのディズニーランドに行きました。そこで妻と言い争いになり、妻のももを膝で1回蹴り、男性はすぐ逮捕されました。そんなのちょっと厳し過ぎると思う

発言から

 「被害者を逃がすだけではDVは解決しない」―。この思いから発足した、DV加害者更生教育プログラム全国ネットワーク。北は北海道から南は徳島県まで、12都道府県の団体が連携協力、情報共有していきます。

暴力は連鎖する

 「あらゆる性差別や暴力、DVのない社会の構築を目標に、多くの人と一緒に活動していきたい」と副代表の佐々木一さん。被害者支援と加害者対策は、社会からDVをなくすための「車の両輪」だとして、加害者の更生教育を義務化する法制度の必要性を「一緒に考えたい」と話しました。 2月には、背後にDVがあった千葉県野田市の虐待死事件をうけて「児童虐待防止のためにもDV加害者対策を」という要望書を、関係省庁や自治体あてに提出しました。 子どものいる加害者の半数は子どもを直接虐待しており、また半数近くがDV家庭の出身者で、暴力が連鎖している現状があります。プログラム実施団体「アウェア」の吉祥眞佐緒さんは、被害者やその子どもたちの声を聞きながら加害者と向き合っています。 「DV家庭にいる子どもたちはDVを感じ取っています。加害者が変わらなければ被害者とその子どもの安全・安心はありません。被害者支援と加害者対策、子どものケアは同時並行で進めていかなければいけない」

被害者の視点を

 北海道「のびぽこ」のまるみさんは、被害者支援の視点をもって加害者更生教育プログラムを実施することが重要だといいます。「加害者だけに聞くと被害者に起きた出来事とはまったく違う話をします。加害者と向き合うには被害者との面談は必須です」と話します。 更生教育プログラムのガイドライン作りについても話されました。大阪「NOVO」の伊田広行さんは「今後、政府と民間団体が協力して全国各地域でプログラム実施が必要となった時に質の担保が必要」といいます。「誰でも勝手にやっていいということではなく、被害者の実態を正しくふまえたプログラムが必要」として「加害者対策と被害者支援のために手をむすび、学びあうことをできたら」。 ガイドラインを作るうえでも吉祥さんは「当事者こそが専門家。必ず被害当事者を入れて考えてほしい」といいます。

根底に女性差別

 集会にはプログラム実施者や受講中の男性、サバイバーをはじめ、約150人が参加しました。 リレートークでは、被害当事者の女性が「DV家庭のなかで子どもは親を憎むようになる。そんな悲しいことが起こらない社会を」と話しました。また、被害者支援に携わる相談員はいいます。「DVという言葉が使われる前から、暴力に苦しんできた女性たちがいる。なぜ被害者や子どもがびくびくと逃げ続けなければいけないのか。加害者対策の法制化を望みます」 LGBTの相談者は「DVは同性間にも起き『逃げたら同性愛だとバラすぞ』と脅されるケースもある。DVの根底には女性差別があり、女性差別がなくならない限り、LGBT差別もなくならない」と語りました。

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